第5回:平成13年「第一空挺団初降下訓練」レポート

 

 
お待たせ致しました!
つれづれなるままに第5弾は、「第一空挺団初降下訓練」(通称:降下初め)の様子をご紹介致します。
都心に程近い千葉県の習志野演習場で毎年1月に展開される、比較的有名な行事です。晴れ渡った冬空に間近で空挺降下の模様が見学できる、空挺ファン(!?)にはたまらないイベントです。

 

 

 

 

「第一空挺団初降下訓練」概要

第一空挺団初降下訓練は、日本で唯一の空挺部隊である第一空挺団が、年頭にあたり今年1年の訓練の充実祈願と、その精強さを示すことを目的として始められたものです。例年、防衛庁長官も訪れ、隊員の空挺降下、地上での戦闘訓練の様子を視察します。
今年は1月14日(日)に実施され、約7,000人が見学。見学会場はさほど広くないため、かなりの混雑でした。しかし、強風のため空挺降下は残念ながら中止、地上における戦闘展示のみとなりました。

 

演習プログラム

1100〜    ◆団長降下〜CH-47ヘリより降下(今回は中止)

         ◆前段演習:隊員空挺降下〜航空自衛隊輸送機より降下(今回は中止)

         ◆後段演習:地上戦闘展示訓練〜潜伏する敵部隊の掃討



 参加部隊
   第1空挺団
   第1ヘリコプター団 第4対戦車ヘリコプター隊 各支援部隊
   航空自衛隊

 

今年は行くぞ!!“降下始め”

“降下始め”。毎年年頭に行われる第一空挺団の訓練行事。テレビのニュースなどで紹介されることもあるので、ご存知の方も多いかと思います。私も訓練については以前より知っていたのですが、実のところ、これまで一度も行ったことのない行事でした。以前より「一度は行ってみたい!!」と思っていたのですが、東京在住である私にとって、ある意味近場であったことが裏目にでたのか、なかなか行けずにいました。で、今年は「必ず行くぞ!!」と心に強くとめ、当日を迎えたのでありました。

1月14日(日)、晴れ。例年、この時期の東京近辺は冬晴れの安定した天候が続く季節なのですが、今年はちょっと違う。数日前に東京の1月としては珍しい大雪。前日までもいまいち晴れが安定しない状態が続いていました。しかも例年以上に寒い…。前日の天気予報でも「雪の可能性…」などということでしたので、朝起きたとき、空を見て晴れわたった天気に正直ホッとしました。「これで今年こそ念願の“降下始め”に行ける!!」…でも寒い(滅多に0度を下回らない都心でも氷点下を記録した朝でした)。0530起床、0630に鴨鍋二士さんのクルマでピックアップしてもらいました。その後、一緒に行くS氏と合流。一路、習志野へ向かうのでした。

0800に現着。会場でクルマは野球グランド(!?)に誘導され、そこへ駐車。駐車した場所で驚いたのは立派に育った霜柱の高さ。その踏み応えに、今日の寒さをあらためて実感。
駐車場所から歩くこと20分、見学会場に到着。0820、さすがにこの時間では来ている人も少なく、お陰で統制台にもっとも近い、ベストの見学位置を確保できました。
さあ、あとは開始を待つだけ!! でも、この冷え込んだ朝の2時間半が非常に辛かったのは言うまでもありません…。

 

見学会場に到着して間もない0830、突如会場にCH-47ヘリが低空で侵入!!
何かと思いきや、ローターから発生する風で、細かいゴミ、枯草などを掃除する“吹き飛ばし”とのこと。
こんな使い方があるもんなんだ…と妙に感心してしまった私。

 
 ●“吹き飛ばし”にやってきたCH-47J

 

会場到着時にはそれほどでもなかったのですが、時間が経つにつれ、北風がかなり強く吹くようになりました。
ある程度の防寒装備をしてきたつもりだったのですが、強くなる北風に耐えられるものではなかったようで、体はどんどん冷え、足先などは完全に感覚が麻痺状態。でも「間近に見れる空挺降下!!」を励みに必死に耐えるのでした。しかしその北風が、寒さを耐える我々にとどめの一撃。会場案内のスピーカーから「本日は規定以上の強風のため、降下訓練は中止…」との知らせが…。う〜っ!! それを楽しみに寒さを耐えていたのに〜!!!!
と言うことで、今日は地上の戦闘展示のみ。でも仕方ないですね、こればかりは。
あとで聞いたのですが、この日の地上風速は14m/sだったとのこと。「習志野は狭いからその風じゃ無理でしょう」とは、我がH-SDFの空挺出身者の談。

 

1100演習開始!!

1100、待ちに待った演習開始!!
まずはCH-47ヘリに乗って空挺団長、防衛庁長官のお出ましです。本当は団長がそのヘリから降下してくるはずだったのですが…。

 
 CH-47Jより空挺団長、防衛庁長官がお出まし


本当はこのあと隊員の降下が予定されていたのですが、強風のため中止。そのまま、約300名の隊員による地上戦闘の展示に移ります。
毎年、少しずつ違う状況を想定して戦闘展示をするのですが、今年は潜伏する敵勢力を発見、包囲し掃討するという状況設定。
ヘリによる空中機動を多用した空挺団ならではの戦闘が披露されました。

 

まずは、ヘリによる上空からの偵察・策敵。熱源映像装置を利用して、肉眼では発見しにくい潜伏中の敵を発見。敵の正体を正確に把握していきます。

  
  ●AH-1S(右下)、UH-60JA(左)、OH-6(左上)による偵察・策敵。熱源映像装置で肉眼で見えない敵まで発見する。

 

敵の潜伏地域を特定し、包囲による掃討・制圧作戦を決定。
やがて、包囲・掃討作戦を支援する重迫撃砲と要員が空輸されます。

 
  ●着陸したCH-47Jから飛び出し、射撃陣地の確保を図る重迫撃砲(空挺特科大隊)要員。

    
    ●重迫撃砲の射撃陣地を確保し、警戒にあたる空挺(特科)隊員。

 
●ついで重迫撃砲(120mm迫撃砲RT)が弾薬を積んだ高機動車とともに空輸され、確保した陣地に降ろされる。

  
 ●空輸された重迫撃砲を操作し、射撃陣地を構築。射撃準備を完了する。

  

 

続いて、敵の離脱を阻止するため、敵潜伏地域を包囲するように空挺隊員がヘリボン降着。

 
●敵包囲のためヘリボン降着する空挺隊員を輸送するCH-47。一部の隊員はリペリングにて降下。

  

 

これで包囲が完成。いよいよ攻撃開始!!

    
    ●敵の潜伏地域に対して攻撃準備射撃を実施する120mm迫撃砲RT。

 
●同じくロケット弾にて攻撃を加え、離脱するAH-1S。

引き続き、包囲をしていた部隊が攻撃前進を開始。また状況の浮動に対応して隊員がさらにヘリボン降着。
離脱を図ろうとした敵を捕獲!

  
  ●着陸後、直ちにヘリが離脱できるよう、ヘリの足に乗り、身を乗り出す空挺隊員。

 
●空陸一体の攻撃に、離脱を図ろうとする敵(赤い帽子)。それを捕獲する空挺隊員。

 

やがて、包囲をしていた部隊が敵潜伏地域に肉薄。敵に主導権を与えぬよう、常に射撃と移動の連繋を保ちながら前進。最終的に敵潜伏地域へ突入し、これを完全に撃破・制圧します!!

    
    ●敵潜伏地域に肉薄する空挺隊員(頭に識別用の白マーキング)。

    
    ●潜伏地域に突入し、掃討・制圧する空挺隊員。

 

一兵たりとも逃さず、制圧・捕獲したところで状況終了!!脅威は完全に排除されました!

 

このあと、観覧席前に空挺隊員が集合。
参加ヘリコプターの編隊飛行、訓練を視察した防衛庁長官より訓示があり、一連の訓練は終了しました。

    
    ●状況終了で集合地点へ向かう空挺隊員。

    
    ●防衛庁長官の訓示のため整列した隊員。

 

 

 




特に装備品等の展示も無かったので、訓練の終了を見届けて、我々は会場を後にしました。
空挺降下を間近で見られなかったのは、やはり残念でしたが、地上戦闘の展示に関しては非常に気合が入ったもので、また総火演よりも間近でその様相を見ることができ、「来て良かった」と思える内容でした。参加の隊員の皆様にも心からご苦労様と申し上げたいところです。
また来年も見に来ます(^o^)!

でも、見学にあたっての防寒装備はもっと充実させるつもり…。

 

2001.1.30up

※降下の模様(平成16年実施)はこちらをご覧ください

 

〜つれづれなるままに〜TOPページへ